松野 奈都子(釧路公立大学)
NPOと企業のパートナーシップのように異なるセクターの組織が協働し、複雑化する社会的課題の解決に取り組むことが求められている。しかし、実際にはパートナーシップの形成・継続は順調に進んでいると言い難い。異質性の高い組織間関係には、目的や価値観の食い違い、パートナーに対する誤解などの問題が生じやすいからである。先行研究は、組織の主観的な側面にあまり注意を向けてこなかったため、組織間の価値観共有プロセスは見落とされてきた。そこで本書では、個人や組織の解釈枠組みである「フレーム」の変化に注目することで、組織間で価値観が共有されるプロセスを検討した。同じフレームが共有されている場合は、どのような行動や目標、施策が重要なのか、あるいは重要でないのかといった価値観を共有することが可能となるが、異なるフレームを持っていると誤解や食い違いが生じることとなる。事例研究の結果、フレームの変化を促す組織間のセンスメーキングのプロセスと、実体験と自己意識的感情がフレームに対する共鳴度を高めることが明らかになった。
松野奈都子(2020)『NPOと企業のパートナーシップの形成と実行―センスメーキングからの分析―』中央経済社。