脇 夕希子(九州産業大学)
ダイバーシティ・マネジメント研究の中で、近年インクルージョンの重要性を指摘されている。しかし、ダイバーシティとインクルージョンの概念が同じであるのか、違うのかを検討している研究は多くない。したがって、当該論文ではダイバーシティとインクルージョンの概念の差異を検討し、日本の企業の取組は、インクルージョンを検討しているのかを考察している。
ダイバーシティとインクルージョンの概念の差異に関しては、ダイバーシティは人口動態上で異なる人々を組織の中で雇用することを意図している。他方、インクルージョンは、従業員の認知によるものであり、それは、自身の独自性が価値づけられ評価されていると従業員が認知すること。従業員が組織の中に所属していると認知すること。そして、従業員への取り扱いが公正であると従業員が認知することである。
日本の企業のダイバーシティ・マネジメントの取組は、ダイバーシティ、インクルージョンの双方の視点は持っているものの、その施策が所定外労働時間の削減や有給休暇取得促進といった休暇や時間に関する取組や女性就業継続施策にかかわる取組といったワーク・ライフ・バランス支援に重点が置かれている。したがって、取組の中に、従業員のインクルージョン認知にかかわる観点が必要になってくると指摘している。
脇夕希子(2019)「ダイバーシティとインクルージョンの概念的差異の考察」『商経論叢』60(2), pp.33-44.